コラム調達コスト削減のためのポイント①
相手を知り己を知る

市場の鈍化により、低成長を余儀なくされる中、常に求められるのが「コスト削減」です。中でも「調達コスト」は取り組みやすい項目です。企業が調達する材の中でもコスト削減の取り組みとして注目すべきは、コストの管理部門が存在しないことが多いために、調達価格が割高なまま放置されがちな「間接材」です。それだけ、短期間に大幅な削減を見込みやすい材であるといえます。

そこで今回は、短期間で、間接材の調達コストを大幅に削減するのための成功の第一、第二ポイントとして、「相手を知る」と「己を知る」について解説します。

成功ポイント1「相手を知る」

間接材の調達コスト削減を成功させるための第一のポイントは、「相手を知る」ことです。

「相手を知る」とは

相手を知るとは、調達している品目、及びそのサプライヤー(相手)の特性や状況を正しく知るということです。

大きなコスト削減の成果を短期間であげるためには、適切な削減方法を選ぶことが重要になります。そのためには相手を知ることが必要不可欠です。

「相手」の特性や状況を把握するための着眼点として、最も代表的な視点は「コスト構造」と考えられます。

印刷費の「コスト構造」の特性把握の事例

ここで印刷費を題材に、「コスト構造」に着目して、特性把握を行う例をご紹介します。

【印刷費のコスト構造】
中心となるコスト:人件費・償却費などの固定費
コスト削減方法:発注量の確保とそれに併せたボリュームディスカウント

印刷費のコスト構造は、「人件費」や機器の「償却費」などの固定費が中心となります。こうした固定費が中心の品目の場合、サプライヤーにとっては、固定費回収が損益上、最重要です。そのため、固定費を回収した後に、価格引下げの余地が比較的大きくなります。

このことから、削減方法としては次のような方法が有効と考えられます。それは、発注の集中による「発注量の確保」とそれに併せた「ボリュームディスカウント要求」です。また、ネット印刷等の「シェアリングエコノミーの活用」も有効です。

このように、相手を正しく知ることで、適切な削減方法を自ずと見出すことができます。

その他のコスト削減の視点

ここでは、相手の特性把握の代表的な視点として「コスト構造」を挙げましたが、他にも次の視点を持つこともポイントになります。

・ベンチマーク可能性の有無
・課金パターン
・サプライヤー間の競合状況
これら3つは、相手の交渉力の見積もりや、適切な削減方法の選定時に有効です。

・価格引き下げ余地の見積もり
相手を知るには、品目別のサプライヤーの価格引下げ余地を見積もっておくことも重要です。価格引下げ余地の見積もりは、汎用性の高い品目の場合、相見積もりなどを通じた、ベンチマーク価格との比較により試算できます。

一方、作業を主体とするような個別性の高い品目は、ベンチマークの取得がむずかしい傾向があるため、試算の際には、商品・サービスの提供に要するコストを分解・推計し、適正価格を見積もる「原価推計」という手法を使う必要もあります。

原価推計の方法などを詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

成功ポイント2「己を知る」

間接材のコスト削減の成功ポイントの2つ目は「己を知る」ことです。

「己を知る」とは

・自社のバーゲニングパワー(交渉力)を見積もること
・自社の体制・プロセスの問題点を押さえること

通常、調達価格はサプライヤーと自社の力関係で決まります。例えばバーゲニングパワーの関係が、サプライヤーが弱く自社が強い場合、サプライヤー間の競争を加速したり、自社から要望価格を提示できたりと、サプライヤーに対する優位性を生かしたサプライヤーマネジメントアプローチ、つまり交渉を通じた価格の引下げが有効です。

一方、力関係が逆の場合、つまり、サプライヤーのほうが強く自社が弱い場合、交渉を通じた価格引下げは困難です。そのため、独自の取り組みが可能なユーザーマネジメントアプローチ、例えば調達材の質・量などの必要性の見直しなどを中心とした戦略を練ることが得策です。

このように、コスト削減を考える際には、己の力をきちんと見積もる必要があります。

調達コストの高止まりの原因と対策

調達コスト削減の課題の一つに、調達コストの高止まりがあります。原因は、自社の体制やプロセスにあると考えられます。大きなコスト削減を目指す場合には、こうした自社の問題点を把握し、是正することも必要です。

この調達コスト高止まりの対策をケース別に解説します。

ケース1.価格の見直しルールが不十分・不徹底なため、契約見直し時に相見積もりを取得せず、価格の見直しなく指名発注が続いているケース

ケース2.各部門が類似商品をバラバラに発注しているためにバーゲニングパワーを十分に発揮できないケース

・対策
これらは多くの企業で見られる状況です。これらのケースでは、モニタリング機能も含めた全社横断的な体制・プロセスの整備や見直しが必要になります。

ケース3.「品質や使い勝手が良い」という理由で高値が維持されているケース

・対策
この場合は改めて、その提供される品質が本当に業務に必要なのかどうか、使い勝手をお金に換算するといくらになるのかなどを、客観的・定量的に議論する必要があります。

ケース4.聖域がコスト高の要因となっているケース
例えば、間接材では、コストを統括的に管理している専門部門が存在せず、馴れ合いや、いわゆる聖域が生じていることもよくみられます。

例えば、営業用の間接材を営業部門が直接調達している場合、「営業取引」と称する、いってみれば馴れ合いに陥ってしまい、言い値で調達している状況です。
また子会社を通じて調達するケースでは、社内での誤った認識の下、取引が聖域化し、調達価格が割高なまま放置されているケースも少なくありません。

このうち、後者の「子会社を通じた調達」の価格の高止まりは、子会社が調達している外部サプライヤーが過大な利益をあげているに過ぎなかった、というケースは実に多いのです。

それにも関わらず、高止まりは「(子会社での)人員の受け皿としての必要コストである」「連結で考えれば損得ゼロ」といった理由で正当化されがちです。しかし実際に計算してみると、受け皿としての人員コストや連結対象となる子会社の利益を超えてなお割高というケースです。

・対策
聖域の最大の問題点は、こうした客観的・定量的な議論の前に、関係者が思考停止してしまう点にあります。よって社内に聖域と思われる領域がある場合、まずはゼロベースの見直しに着手することが対策になります。

まとめ

調達コスト削減において、第一、第二のポイントとなるのは「相手を知る」「己を知る」です。
相手と己、双方にさまざまなケースがある中、最も適した対策を実施することで、調達コストの削減が可能になります。

次回は第三のポイントである、「全社一丸となった交渉」について解説します。

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